「いつも抱っこを求められて、体が持たない…」「抱っこしすぎると、甘やかしにならない?」

日々の育児の中で、そんな不安や疲れを感じることはありませんか?
実は、小さなお子さん(特に未就学期)の抱っこは「甘やかし」ではなく、子どもの心を育てる大切な時間です。

このことを見事に証明した、心理学の有名な実験をご紹介します。

■ ハーロウの「代理母実験」

1950〜60年代、アメリカの心理学者ハリー・ハーロウは、子ザルを使ってある実験を行いました。人工的な環境で育つ子ザルのケージに、2種類の「お母さんの模型(代理母)」を設置したのです。

  • 「針金の母」:針金むき出しだが、ミルクが出る哺乳瓶がついている。

  • 「布の母」:ミルクは出ないが、柔らかいスポンジと布でできている。

従来は「ミルク(栄養)をくれる存在を好きになるのだろう」と考えられていました。しかし、子ザルが選んだ行動は予想外のものでした。

子ザルはお腹が空いた時だけ「針金の母」へミルクを飲みに行き、それ以外の1日のほとんど(17〜18時間)を、ミルクの出ない「布の母」にしがみついて過ごしたのです。
さらに、大きな音が鳴る怖いおもちゃを入れると、子ザルは真っ先に「布の母」へ逃げ込み、抱きついて心を落ち着かせてから、少しずつ外の様子を観察し始めました。

■ 実験からわかること

ハーロウは、子どもが親に抱く愛着は単に「お腹を満たしてくれるから」ではなく、「柔らかく温かいものに触れる心地良さ(接触快適性)」によって育まれると結論づけました。

近年の研究でも、肌と肌が触れあうスキンシップを行うと、脳内で「オキシトシン」という安心感や信頼感をもたらすホルモンが分泌されることが分かっています。
これにより、子どもの心には「ここは安全だ」「自分は守られている」という感覚が育ちます。

心理学ではこれを「心の安全基地」と呼びます。
子どもは、いつでも戻ってこられる「安全基地」があるからこそ、安心して外の世界へ挑戦することができるのです。

■ 忙しい毎日のなかでできること

抱っこを求めるのは、子どもが「心のバッテリーを充電したい!」とサインを出している状態だと考えられます。
甘やかしてわがままに育てているのではなく、自立に必要なエネルギーを蓄えている最中なのです。

そうはいっても、家事や仕事で忙しい時や、親自身が疲れ果てている時もありますよね。
そんな時は、無理に長時間抱っこし続けなくても大丈夫です。

  • 5秒だけ、ギュッと強めに抱きしめる

  • 「抱っこね」と声をかけながら頭や背中をなでる

  • 膝の上にのせて一緒に絵本を読む

こうした短時間の心地よい触れ合いでも、子どもの心はしっかり充電されます。
ご自身の体調も大切にしながら、できる範囲で「ギュッ」とする時間を楽しんでみてくださいね。

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参考文献
無藤隆・岡本祐子・大坪治彦(編) 2009 「よくわかる発達心理学[第2版] 」ミネルヴァ書房

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【ワンポイントQ&A】抱っこやスキンシップは、何歳くらいまで必要?
特に物理的な抱っこが重要となるのは0〜2歳頃、そして愛着の土台ができる未就学期の6歳頃にかけても大きな意味をもちます。
ですが、小学生以上になっても「ハイタッチ」「肩を並べて話す」「頭をなでる」といった形を変えたスキンシップが子どもの「安全基地」になります。
「求められたときは、できる範囲で心の充電をしてあげよう」というゆったりとした気持ちで向き合っていけたら良いのではと思います😌